昨年の悪夢のような大学入試共通テストが一転、思考力を試す問題のバランスが取れた出題となり、冷静な分析に基づいた国公立大学の出願先相談が多くなってきました。とはいえ・・・
一番多いのは『C判定』で出願するべきですか?という質問です。
最後は親でも、学校の先生でも、塾・予備校の先生でもなく自分で決める必要があります。
が、ひとつの考え方を示しますので参考になれば幸いです。
※蛍雪時代 1月号には【共通テスト後!自己採点と2次出願の最適解】という特集が組まれています
共通テストの難易度はどうだったのか?
『2年目のジンクス』が叫ばれた2022年度 共通テストはまさに悪夢でした。
いよいよ共通テストも3年目、その難易度はどうだったのでしょうか。
まだ平均点は中間集計しか出ていないので明言はできませんが、1日目の地歴はセンター試験とは一線を画す出題の形式が定着してきたことと、その対策が受験生の中で進んできたことが垣間見えます。
※国語がそこまで荒れなかったのも受験生にはプラスでした。新課程の試作問題が出た後でしたから、複数の資料を読み解く問題が出て混乱に陥ることさえ予想していました・・・
そして、2日目の数学が昨年と比較して大幅に易化。思考力は必要ですが、計算分量が減ったことで十分な思考時間を取ることができ、平均点にも大きな影響を与えたと思われます。
理科は化学の計算が重く、時間が厳しかったと思います。
※あと吸光度(ランベルト・ベールの法則)は攻めましたね。大学入試センターの本気をみた気分♪生物はちょっと問題が良くなかったですね。勘違いさせようという悪意が強く、化学を見習うべき。
このことから予想されることは・・・
①全体的に4~5%程度は昨年のボーダーよりも上がるのではないかということ
理由は、数学が大幅に易化したという事実。
あとは、理系優勢で物理・化学選択者が5%程度上がっていると予想されます。
逆に文系は地歴が理科ほど点数が取りやすかったわけではないので4%程度上がっていると予想。
②全体的に『イケイケ』の出願になるのではないかということ
理由は、全体的に直前の模試や過去問よりも手ごたえがあり、『上手くいった』と感じているはず。
ですが、今回の共通テストでどちらの数学も80点を下回っていたり、理科(特に物理)も同様に80点を切っている状態であれば、難関大志望者にあるまじき二次力であると認識すべきです。
地方国公立大学など共通テスト比率が高めの大学を志望する場合も、二次試験の割合が小さいからと気を抜くことは許されません。狭い範囲にたくさんの志望者がいると考えて対策を丁寧に行っていきましょう。
③国公立大学の医学部志望者は、共通テストでふるい落とされていない層に注意すべきということ
医学部志望者に取って共通テストは最初にして最大の関門ですが、国語も社会も大幅に難化しなかったこともあり差が付いていない状況だと予想されます。
数学・理科に特化した層がイケイケで出願してくる可能性があるので、二次試験科目の少ない大学や数学・理科の配点が多い大学は注意が必要です。
きちんと共通テストの点数が取れているなら二次試験は英数国のバランス配点の大学がいいかもしれません。

バンザイシステムの判定を1年前だけでなく2年前とも比較する
【国立大学 文系】
大阪大学 経済学部 経済・経営
2023年度共通テストリサーチ(300点満点)
A判定 252 B判定 242 C判定 232 D判定 222
※ボーダー得点 237
1年前 A判定 240 B判定 230 C判定 219 D判定 207
※ボーダー得点 225
2年前 A判定 261 B判定 253 C判定 245 D判定 237
※ボーダー得点 249
神戸大学 経済学部 経済(総合)
2023年度共通テストリサーチ(400点満点)
A判定 320 B判定 309 C判定 297 D判定 284
※ボーダー得点 304
1年前 A判定 308 B判定 297 C判定 285 D判定 272
※ボーダー得点 292
2年前 A判定 336 B判定 325 C判定 315 D判定 304
※ボーダー得点 320
昨年から判定基準とボーダーは『3~4%程度のアップ』
昨年は共通テスト難化の影響を受けて、文学部や外国語学部でもマイナー言語などの例年では倍率が低くなりがちな学部・学科に人気が集中するという傾向がありました。
今年の出願を考える上で、昨年の倍率よりも『2年前の倍率』を参考にすることをオススメします。
二次力に自信があるとしても、文系は共通テストと二次試験の配分が均等に近い大学が多いので C判定 の場合はワンランクダウン を検討しましょう (現役志向の場合はです)
【国立大学 理系】
京都大学 医学部 医学科
2023年度共通テストリサーチ(250点満点)
A判定 233 B判定 226 C判定 219 D判定 210
※ボーダー得点 223
1年前 A判定 230 B判定 219 C判定 210 D判定 203
※ボーダー得点 213
2年前 A判定 238 B判定 229 C判定 222 D判定 215
※ボーダー得点 225
大阪大学 医学部 医学科
2023年度共通テストリサーチ(500点満点)
A判定 460 B判定 447 C判定 432 D判定 415
※ボーダー得点 440
1年前 A判定 445 B判定 428 C判定 412 D判定 395
※ボーダー得点 420
2年前 A判定 465 B判定 452 C判定 437 D判定 420
※ボーダー得点 445
奈良県立医科大学 医学部 医学科(後期)
2023年度共通テストリサーチ(900点満点)
A判定 819 B判定 801 C判定 783 D判定 765
※ボーダー得点 792
1年前 A判定 792 B判定 768 C判定 744 D判定 720
※ボーダー得点 756
2年前 A判定 828 B判定 804 C判定 780 D判定 756
※ボーダー得点 792
昨年から判定基準とボーダーは『3%程度のアップ』
理系最難関といわれる医学部医学科においても、全体的に昨対3%程度のアップとなっています。
得点別の人数分布を見ても昨年のような歪な形ではなく、きれいな分布になっています。
このことから昨年のように二次試験勝負という見方は難しく、共通テストの点数差は確実に存在しており言葉で言うほど二次逆転は難しいと考えられます。
特に理系は 数学・物理が簡単だったことを考慮すると、数学強者や理科強者が集団に埋もれている可能性が高く、二次試験において数学・理科の点数比重の大きな大学は厳しい戦いになると防衛線を張るのが賢明です。
今回の共通テストで C判定 だった人は、大きな事故を起こさず共通テストをクリアできた人だと思います。現役志向であるならば、そのアドバンテージを活かすことが賢い出願と言えます。
ワンランクダウン(共通テストの比重が大きく、B判定以上の判定がでる大学)もしくは、トレンドではない学科(理学部全般、応用化学系など)の選択を検討しましょう。
C判定の場合はどう出願を考えるのか
【国公立大学 文系志望者の場合】
昨年から3~4%程度アップと予想されるので、2年前の合格最低点を目安に算出します。
文系の科目は逆転しにくい科目ばかりなので、今までの模試や過去問の出来具合で合格最低点に届くと自信を持てるかどうかが出願の分かれ目になります。
例えば、大阪大学 経済学部 経済・経営 のC配点を考えると・・・
2年前の合格最低点は 409.64/600 だったので、410点を目標とします。
共通テストの結果がCラインの235点だった場合、上記の目標点数の 410点 から引いた175点/300点 を二次試験では少なくとも得点する必要があります(概ね6割目標ですね)
もちろん二次試験も難易度の上下があるので、昨年の問題を解いてみた感触が大事です。
※この例だと二次試験の得点率は60%なので大阪大学では例年並みの目標値といえます(概ね55~60%が標準的な目標得点率)
この得点を取れるイメージが出来ないなら志望大学を下げる判断をする。
希望的観測ではなく、一ヶ月でなんとかなるイメージが持てるかどうかが大事です。
【国公立大学 理系志願者の場合】
理系の場合も、全体的に3~4%程度アップしていますが、Aライン付近で団子状態というよりは全体的に分布しており、ここも2年前の合格最低点を目安に考えるのが賢明と言えます。
二次試験の点数比率が大きい大学を志望しており、二次試験の方に自信があるなら出願を前提に考えましょう(大阪公立大学のように数・理に偏る場合はしっかり吟味してください)
例えば大阪大学 医学部医学科 なら共通テストがCラインの432点だった場合に、Aラインから28点離れていますが、二次試験のわずか 1.9%に過ぎません。
とはいえ合格最低点でも二次試験の得点率が70%近くになる学科で約2%をわずかと言える自信があれば・・・という話ではあります。
一般的な理系学部の場合は、C判定の中でも上位で検討大学と相性がいいなら攻めるという選択肢もありえます。
ですが、D判定に近いC判定の場合は志望校変更を検討したほうが賢明と言えます。
旧帝大や神戸大学などの難関大志望者で、共通テストの数学ⅠA・ⅡB・物理で80点を下回る科目があり、判定が C ならば『志望校変更を検討した方がいい』
※共通テストの数理は思考力は要するが計算量も少なく、80点未満は根本的な学力不足。
まとめ
わずか一ヶ月で夢のような学力の上昇はありません。
まだまだ伸びると思いますが、合格に必要な二次試験の点数を計算した時に、『どうやってこの点数を取るのか』が明確にならない場合は志望変更を検討すべきです。
例えば、数学であと10点、物理であと10点伸ばせば合格できる!というのは妄想です。
数学で頻出かつ失点率が高いベクトルを完答できるように訓練して10点上げる。
あと、学習の不十分な電磁気、とくに電磁誘導の問題を集中的に演習することと、熱力学が疎かになっているのでその演習。完答は出来なくても合計で8~10点は上げれる。
こういった志望大学の出題傾向と自分の現状を比較し、残りの時間を使って実現可能かどうかを
考えることが大事です。
もちろん、それ以外の科目もキープもしくは微増が必要でしょうから、ターゲット科目ばかりに時間をかけていいわけでもありません。
最後は自分で決めるのです。
行きたい!チャレンジしたい!も大事ですが、その前に十分に勝ち筋があるか検討しましょう。
気合根性で合格できるほど、今の大学入試は甘くないのです。
この記事を読んでくれた人は、このまま出願するべきかを悩んでいる人だと思います。
悩む前に自己分析。具体的に頭を動かすことが大事。悩んでも何も解決しません。
戦えるかどうか、どう戦うかを検討して出願するかどうかの答えを出してください。
将来を決める選択だからこそ、悔いの残らないように。
検討を祈っています。